第7章|Automatic

1950年代の終わりにかけて、腕時計の世界では自動巻き機構が広く普及し始めていた。

腕時計は長いあいだ手巻き式が主流であり、使用者がリューズを回してゼンマイを巻き上げる必要があった。1920年代には英国の時計師ジョン・ハーウッドによって自動巻き腕時計が考案され、1931年にはロレックスが回転ローター式の自動巻き機構を発表している。しかしこの機構が一般的に広く普及するのは1950年代に入ってからであった。

この流れの中で、Smithsもまた自動巻き腕時計の製造に取り組む。

1959年頃、Smithsは25石の自動巻きムーブメントを搭載した腕時計を発表する。このムーブメントは Cal.100 として知られ、主に Imperial Automatic や Everest Automatic といったモデルに搭載され、1960年代半ばまで生産された。

当時の英国では、腕時計の多くがスイス製ムーブメントに依存していた。英国ブランドの時計であっても、内部機構はスイスから輸入されたものという例が少なくなかった。その中でSmithsは、ムーブメントの製造から組立までを英国内で行う体制を維持していた数少ないメーカーであった。

Smithsの自動巻き時計は、コレクターの間で「fully English automatic(唯一の完全英国製自動巻き)」と呼ばれている。ムーブメントの設計・製造・組立が英国内で行われた自動巻き腕時計は多くなく、Smithsの自動巻きはその数少ない例のひとつとされている。

これらの腕時計は、当時のカタログでは 10.xxx 形式のモデル番号で管理されていた。しかし1971年、Smithsのチェルトナム工場が閉鎖された際、多くのカタログや設計資料が廃棄されたため、現在では当時の型番体系を完全に復元することは難しくなっている。

そのため現在では、当時の広告や実機をもとにコレクターの間でモデル番号を整理する試みが続けられている。Barrie Smith の著書『Smiths Watches』は、その整理をまとめた代表的な資料として知られている。

また、この自動巻きムーブメントにはひとつ興味深い点がある。

Cal.100 の構造は、同時期のスイス製自動巻きムーブメントと非常に良く似た部分があった。その設計背景は現在でも明らかになっておらず、これはひとつの興味深いミステリーとなっている。

Smithsの自動巻き時計は、1959年頃から1960年代半ばまでという比較的短い期間に生産された。英国内で製造された自動巻き腕時計として数少ない存在であり、英国時計史の中でも重要な位置を占めている。

ーー次回予告ーー
第8章|軍用時計 W10

1967年、Smithsは英国軍のために新しい軍用腕時計を製造する。
それが W10 である。

英国で製造された最後の軍用腕時計となったこのモデルは、Smithsの歴史の中でも特別な位置を占めることになる。

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